君は世界に一人だけ

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感じたことと考えたこと

ふつうの古代人の物語、24時間ぶん | 「古代ギリシア人の24時間」

ここのところ、毎夜読んでいる本がある。 
古代ギリシア人の24時間」(著/フィリップ・マティザック) という、フィクションとノンフィクションのハーフ&ハーフみたいな本だ。

タイトルのとおり、さまざまなアテネ人の一時間の物語が24編(つまり24時間ぶん)おさめられている。語り手は神殿の衛兵、評議員、主婦、奴隷などの、ふつうの人々。古代ギリシアを舞台にした短編の物語として楽しめ、宇宙と同じくらい遠い古代ギリシアがぐんと近くなる。

そもそも古代ギリシアについて知っていることといえば、アクロポリスを建設したとか、星座や神話が生まれたとか、白い布を体にぐるっと巻きつけて縄でしばるとかそのくらいで、古代ローマと何がどう違うのかも知らない。

そんなわたしでも、楽しめた。というか、毎夜わくわくしながら読んだ。

たとえば、軍船は裕福な市民が用意するだとか(当時はそのくらいしか名声を得る手段はなかった)、騎兵隊の馬や装備も市民の自前だとか(裕福な家の子どもは立派な装備だった)、敵国の捕虜をあんまり奴隷扱いしないとか(いつ自分たちが逆の立場になるか知れない)、アテネが近隣の島々をどんなふうに騙し征服していったかとか。

「家にいたって男は戦争の話ばっかり」と仲のいい奴隷同士でぼやいたり、ひまでしょうがない若い主婦がすてきな男の子にあっさりものにされちゃったり。そんなお話を暗がりで読んでいると、ふしぎに落ち着く。今に生きる人々と、そう変わらない古代の人々の営みに。

はじめは4時間ぶんくらい読んでいたのが、もったいなくて、1時間ぶんずつ読むようになった。本を読み終えてしまうのがさみしい、でもほかの古代ギリシアの歴史書を読むかといったら、もちろん読まない。

これまでにも「古代なになに」といった本を図書館で借りてきては、1ページも開かずに返す運動をくり返してきた。物語形式になるとこうも読みやすく引きこまれるのだなと、小学生みたいで恥ずかしいけど、素直におどろいた。

そういえば小学生のころ、教室のうしろの棚に歴史まんがが一揃い並んであった。休み時間には男子も女子もこぞってそれを読んだ。合法的にまんがが読めるという理由と、もうひとつには、昔むかしの人々の物語の中に没入したいという欲求があったように思う。社会の教科書を開いても、人物や場所の名はその単語以上の意味を持たなかったから。

それにしても古代ギリシアに女として生まれそのうえ主婦にでもなったら相当ひまそう。すてきな男の子に夢中になる以外やることはなさそうだから、多少しんどくても現代に生まれてよかったです。

 

 

最近借りた3冊。