「連作の情景」のタイトルが詩的な、モネ展へ行きました。
モネは19~20世紀初めの、印象派を代表する画家。とんとん拍子に成功したのではなく、家族で貧乏に耐えしのび、それでもあきらめず描きつづけ、晩年にようやく認められた苦労人です。
こんな付け焼き刃の知識でも、事前に仕込んでおくと感動がかさ増しされるから不思議。
絵を見てうっとりする、きゅんとする、というのは久しぶりで、うれしく満たされた気持ちになりました。
満たされた、といえば、このモネ展で小さなチャレンジをしてみたのも、満足感が増した要因のひとつ。
それはひとつの絵を、できるだけ長い時間じいっと見ることです。
ある本によると、アメリカの某大学では「ひとつの絵を3時間見る」というワークショップがあるそうで、3時間、うんざりするほど見つめるとあら不思議、ふつうじゃ気づけない細かなディテールまで気づくといいます。
めっちゃ混んでるし監視員が怖いし3時間なんてとても無理。それでもちょっとやってみようと、じゃまにならないよう隅に立ち、ひとつの絵をじいっと見てみました。
見たのは「積みわら、雪の効果」。今回の展示でいちばん楽しみにしていた絵です。
じいっと見ていると、いろいろなことに気づきます。積みわらの、逆光になっている縁の輝きとか、影の縁の濃さ、遠目には白なのに実はピンク青オレンジさまざまに塗られてあるとか。
しまいには雪のなかで、白い息を吐き指先を冷たくしながら描いたモネに思いを馳せ、ぐーっと入り込んでしまいました。
3時間は無理でも、5分や10分なら、できます。気に入った絵で、ぜひ試してみてください。幸福感がブーストされます。
詩的なタイトルの美術展、モネの絵はもっと詩的でした。夢の中のような、見たこともないのに、その場所へ行ったことがあるような、モネと同じ風景を知っていたような気持ちにさせてもらいました。
そして「名前だけは知ってる」程度だったモネを、大好きになりました。
東京展の開催は1月28日まで。お近くの方はぜひ。