六本木の国立新美術館で開催されている「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」へ行ってまいりました。
「メトロポリタン美術館展」では、ニューヨーク・メトロポリタン美術館所蔵の、選りすぐり名画65点 (うち46点は日本初公開) が展示されています。
モネ、ルノワール、フェルメール、ゴーギャン、ゴッホなど、門外漢のわたしでも名前だけは知ってるぞという超メジャー巨匠の作品がそろう、ビッグな美術展。
美術系ブログによると、「この機会を逃したら日本では二度とお目にかかれない」超貴重な作品ぞろいとのこと。
そんなわけで、期間終了まぎわにすべりこみ鑑賞してまいりました。
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これまで、めあての絵以外は素通りしていたわたくし。
今回は作品の引力にあらがえず、一点一点しっかり鑑賞してまいりました。
なかでもとくに印象的だった絵について、感想を書き残しておきたいと思います。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
『女占い師』
ラ・トゥールは17世紀前半に活動したフランス画家です。
作品によって「明」と「暗」を描きわけるのが特徴で、こちらは「明」のほう。
ちなみに、今回の美術展の顔となっている作品です。
真ん中のボンボンらしき男性が、おばあちゃん占い師にお金を渡しつつ、相手の話を「ほんとかなあ」という顔で聞いています。
そのすきに、まわりの女性たちが彼の装飾品をこっそり盗んでいる……という、犯行現場の絵です。
男性はどことなく、世間知らずなおぼっちゃんぽい印象。「年上の女性にはかなわん」ということなんでしょうか。
登場人物の目や手の表情も見ものですが、個人的には、おばあちゃん占い師のサリーっぽい衣装がお気に入りです (実際はもっときらびやかなんですよ)。
フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ
『花咲く果樹園』
ゴッホは19世紀終わりに活動していた、オランダ出身の画家です。
『花咲く果樹園』は、ゴッホがパリからアルルへ移り住んだ年の春に描かれたもの。
右手前に熊手が描かれていることから、人の手で整備された果樹園だとわかります。
ゴッホの他の絵についても同様ですが、退色がかなりすすんでいて、もとのあざやかさはないのだそう。
たしかに、他の画家によるあでやかな彩りの絵にくらべると、いかにも地味です。
それでも、理由はうまく説明できないんだけど、やっぱりゴッホが好きだなあと思いました。
ゴッホの絵そのものというより、彼の絵を眺めているときの心持ちが好き、というか。
個人的には、細い枝がおいしそうだなと思いました。チョコレートのかかったプレッツェルみたいで。
クロード・モネ
『睡蓮』
19世紀のフランスで活動していた印象派の巨匠・モネ。
幅2メートルもある『睡蓮』は、美術展の大トリでした。
モネは人生の後半、自宅に睡蓮の池をつくり、約30年間「睡蓮」をモチーフに描きつづけました。
『睡蓮』は、彼が白内障をわずらい、妻と長男を亡くしたあとの1916年から1919年に描かれたものです。
絵に近づきすぎると、なにが描かれてあるのかさっぱりわかりません。
すこし離れた場所からぼんやり眺めていると、あ、たしかに睡蓮……と認識できる。夢のなかで見たような睡蓮です。
同じ風景の写真は2秒で飽きるだろうけど、『睡蓮』はいつまで見ていても見飽きませんでした。
(こちらの作品は版権が切れていないため、画像が貼れませんでした。どんな絵かは以下からご覧ください)
マリー・ドニーズ・ヴィレール
『マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ』
65点の作品中、とくに心に残った絵はこちら。
フランスの女性画家・ヴィレールによる、女性画家の肖像画です。
ヴィレールは女性画家がまだ希少だった時代、18世紀後半のフランスで活動していました。
この作品は別の作者 (ナポレオンの肖像画を描いた巨匠) による傑作とされていましたが、その後の研究で彼女の作品であると証明されました。
彼女について判明していることは少なく、残された作品も数点のみ。それを知らずにこの絵を見ても、受ける印象は大きく変わらないのではないかと思います。
展示作品を最後まで鑑賞したあと、この絵に戻り、すみずみまでじっくり見て帰りました。
図録を買いました。
やることのない休日に、紅茶でも飲みながらちびちび読みたいと思います。