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感じたことと考えたこと

退職の意向を伝えて、社長の一言に泣く 〜アラフォーの転職⑤

転職は、希望退職日の2ヶ月以上前に決まっていました。

littleray.hatenablog.com

 

なのに、上司にはなかなか伝えられませんでした。

なぜなら弊社は伝統的に、退職の意向を伝えたとたん、冷遇されるから。

辞める理由さえ聞かれず、さっさと出ていけといわれる。有給消化もさせてもらえない……。

じじつ、退職の意向を伝えた翌週に辞めらせられた、という実例を聞いたばかりでした。

きっと合法じゃないだろうけど、会社と戦うつもりは、最初からありませんでした。

退職の意向を伝える

「今日も言えなかった……」をくり返すこと、一ヶ月。

これ以上は引きのばせないポイント・退職日の一ヶ月前になるまで、なんのアクションも起こせませんでした。

勇気をかきあつめて「話がある」とSlackで上司に伝えると、5秒後に先方から電話が。

「そうですか」わたしの退職意向を聞いた上司は、あっさりとそう言いました。「きょう、社長にも伝えておきます」

知ってはいたけど、マジだった。辞める理由なんか、聞かれないんだ。

十なん年も勤めたのに、そんなもんかと思いました。

社長からの言葉

翌夕、上司から電話がかかってきました。

「社長の言葉を、そのまま伝えます」

明日辞めろと言われる。そう覚悟しました。
わたしのような人間を十なん年も雇い続けてくれた、それだけでもありがたかったじゃないかと、心の前にクッションをいくつも用意しながら。

「会社にできることはないか聞いてくれ、とのことです」

相手がなにを言っているのか、すぐには理解できませんでした。
わたしが黙っていると、上司は言葉を変えてくり返しました。

タチバナさんがなにか問題を抱えているなら、それを会社で解決できないかと、そうおっしゃっています」

まったく想像もしないことが起こると、頭の回転にブレーキがかかります。

そのかわりに他の感覚は鋭くなって、電話越しの上司の息づかいや、自分の心臓の音、外で鳴っている救急車のサイレンなんかが、妙にクリアに聞こえました。

これまでずっと、自分は不要な人間だと思っていました。

社長にも、上層部にも、ほかの社員にも、「あんなやつ、さっさと辞めればいいのに」と思われている。ずっと、そう考えてきました。

できるだけ存在感を消して、息をつめるように働いてきた、十なん年。

なにかを口に出したら泣いちゃいそうでした。でも黙ってるわけにもいかなくて、すみません、と言いました。

すみません。そんな、もったいない言葉……。
そう言ったあとは、もうだめでした。涙がとまらなくなっちゃったのでした。

十なん年の勘違い

これまでの悩みを打ち明けると、上司はおどろいたように言いました。「なに言ってるんですか。だれもそんなこと思ってないですよ……」

橘さんがいるから、うちの部署はどうにか回っている。社長もそう言っている。橘さんにまかせておけば安心だと。

「この前だって、○○の案件を丸投げできたのはタチバナさんだからです。僕も、みんなも助かってるんですよ。社内のだれに聞いたって、みんな同じことを言うはずです」

ああもう、と思いました。

こんなことなら、最初から相談しておけばよかった。
ひとりで勝手に妄想して、毎日落ち込んで。なにやってたんだろう。

この十なん年、ずっと、ずーーーーっと勘違いしてた。
ばっかだなぁ。そう思いました。

「ひとこと」の大切さを痛感しました。退職というカードを切ったあとで。

手探りで進むしかない

正直、悩みました。引きとめられるなんて想像もしてなかったから。

だけどこのまま、いまの会社に残る選択はないのもわかっていました。

なぜなら、この先「いつか」、切実に転職を望むから。
「いつか」動くなら、できるだけ早くに動いたほうがいいから。

そうして、理詰めで「決断した」「腹をくくった」つもりの一方で、なにかに押し出されるようにして物事をきめているような、ふわふわした感覚が、常にありました。

どんなに悩んでも、決断しても、絶対の正解なんてわかりません。

振り返ったあとで、「あの決断でよかった」と自分に言い聞かせるしか、ないのかもしれません。

こちらの希望 (退職日および有給消化) は、あっさり承諾していただけました。

いったいなにに怖がっていたんだろう?

 

人生の転機さえ、手探り。心の寄る辺のなさに、ため息をついたり、ぼうぜんとしたり。

この歳になってもまだ。