君は世界に一人だけ

君は世界に一人だけ

感じたことと考えたこと

ちょっとしたこと

夏はだいきらいだけど、夏の野菜は、だいすき。

トマト、きゅうり、茄子、いんげん、おくら、ズッキーニ、ゴーヤ。うち栄養ありまっせ! な色あいを見ていると、しずんだ気持ちがあかるくなる。

だいすきな夏野菜を、近所の直売所で安く手に入れられるのは、ひかえめにいってかなり幸運だと思う。

直売所に並ぶ野菜は、みんなとれたて。それだけでもうれしいのに、農家のおじさんに「おくら、あります?」と聞けば、裏の畑でもいでくれる。「これ、曲がってるけど」と、たまにおまけもくれる。直売所で野菜を買うのに慣れると、スーパーではちょっと買えなくなってしまう。

新鮮な野菜をどっさり買うと、仕事でつらいようなことがあっても、ひとときあかるい気持ちにみたされる。野菜そのもの、というより、自分にとって正しいことをしている感じ、がうれしいんだと思う。

そういえば、若いころは野菜がだいきらいだった。肉がいちばんえらい、野菜は格下と思っていた。日常のちまちましたことに目を向けるのがいやで、自分にとって何が正しいかなんて、まるで考えてなかったっけ。

ひとふくろ100円

夏野菜は、冷蔵庫に入れない。新鮮なうちに調理か下ごしらえしてしまう。

定番はラタトゥイユ。トマトやら茄子やらズッキーニやらを刻んで、オリーブオイル、塩、オレガノ、ローレルで炒め煮にする。鶏肉があれば、数種類のスパイス、塩、ヨーグルトで煮込んで、辛くないスパイスカレーに。

ラタトゥイユ(またはカレー)を煮込んでいる間に、残りの野菜を下ごしらえする。きゅうりとゴーヤは切って塩をまぶし(ゴーヤをひとくちかじって顔をまげる)、おくらといんげんはさっと塩ゆでに。

調理は好きでも得意でもない。必要にかられてやってるだけで、手際もよくない。それでも、できたものを保存容器にうつすころには、そこはかとない自信めいたものが戻ってくる。

つらいようなことがあって、自信がなくなったときには、日常のちょっとしたことが大事、と思う。新鮮な野菜を買うとか、新しいスパイスを使うとか、ゴーヤをそのままかじってみるとか、そういうちょっとしたこと。若いころばかにしていた、そんなようなこと。

春の野菜もすきです