キャンドルに火をつけるのに、長らく「ロズレー」というメーカーのライターを愛用していました。
ROSLE レズレー :ドイツのキッチンツール 商品情報:ユニバーサル ライター 27.5
変わらず気に入ってはいるのですが、どうにも付きが悪くて。着火させるのに10回も20回もかちゃかちゃやってると、だんだん窓から投げすてたくなります。
新しいのに買い換えるにしても、すでに廃盤。かといって100円ライターじゃ味気ないし……。
マッチを使ってみようと思いついたのは、そんなキッカケからでした。
マッチと死
マッチといえば、お墓参りやお仏壇で使うイメージがあります。
実家ではろうそくや線香に火を灯す専用で、それ以外の着火対応はライターが担っていました。いま思えば、あえて使い分けていたのもしれません。
子どものころ、お彼岸でしきびを燃やすのに、親にせがんでマッチを擦らせてもらったことがあります。
マッチを擦る。しゅっと音がして、火がつく。火薬の匂いと、指に迫る火。
小雨が降っているにもかかわらず、マッチの火は不思議に消えませんでした。指に迫ってくる小さな火が、心の底から怖かった。投げ入れたマッチが、あっという間に白いしきみを燃やしていくのを黙って見ていました。
マッチを擦って火薬の匂いを吸い込んだとき、幼心に抱いた純粋な恐怖がなつかしく思い出されました。恐怖というより、ちょっと畏怖にちかい感覚です。
あのころの「おとな」たちよりもおとなになった、にもかかわらず、やっぱり怖い。マッチというものが、わたしのなかで死と結びついているからかもしれません。
原風景の再現
早朝と夜、キャンドルに火を灯す。
ものの本で読んだあこがれの生活が、いつの間にか日常に根づいた習慣となりました。
いまはそこにマッチを擦るという原始的な習慣までが加わった。こうなると、もうおしゃれというより原風景の再現です。
自分がなにに心地よく感じるかはひとそれぞれで、いろいろと実験していくなかから「これぞ」と感じるものを見つけるしかありません。
ただ、もしかしたら幼いころの原風景と結びつくモノやコトのなかに、安らぎのヒントが見つかるかもしれない。
おしゃれであるとか、褒められるだとかの価値基準でなくて、自分の根っこにあるものをもういちど見つけ出す営み、あるいは実験が、ときには必要なのかもと感じました。
キャンドルの火は、お仏壇のろうそくにつながっていたんだなあ。