君は世界に一人だけ

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感じたことと考えたこと

夫の大ちゃん熱が、私を超えていく [前編]

このエントリは、前後編の2回に分けてお届けする。
前編は「スーパードライ夫が夢見る少年化するまで」の話をお聞きいただきたい。

出戻った私に感化される夫

25年ぶりにaccessに出戻って、5ヶ月が経った。

そんな私に感化されたらしい夫が、にわかに大ちゃんへの熱を高めている。

彼のおかしな言動を胸のうちにしまっておけず、その一部を当ブログでも語ってきた。

彼の大ちゃん熱が、まだ冷めない。

もちろん、ほんもののファンにくらべたら下の下。微熱にも満たない熱量でしかない。

それでも、「きんきんに冷えたスーパードライ」くらいクールでドライかつ毒舌な男が、これほどの期間「大ちゃんが、大ちゃんが」とか言ってるのは、やはり相当におかしい。

さっさと飽きて冷めると思いきや、意外なほど保温状態が持続している。
むしろ私にたいし、マウントじみたジャブを打ってくるのである。

「あのさ、バージンエモーションとジュエリーエンジェル、ぜんぜん違うから。どこが似てるの」

「何、その『しゅわしゅわ』って。ムーンシャインダンスのイントロ、そんな音鳴ってないよ」

「今口ずさんでるのってもしかしてアクセス? キーが違いすぎて違う曲に聞こえる」

「へたくそ」

完全なマウントである。言いがかりもはなはだしい。

夫についてⅠ

ここであらためて、夫について簡単に説明したい。

  • 10代の頃、大ちゃんや小室さんの音を熱心に研究していた元シンセ少年
  • 大ちゃんのデビューアルバムはもちろん、大ちゃんが手がけたシングルからアルバムまですべて初日に買っていた
  • HIROにはまったく興味がない

我々はお互いに、相手がaccessを好きだったと知らなかった。
20年も顔を突き合わせていたのに。もっと早く言えよという話である。

これだけを書くと「彼と同じアーティストが好きだったなんて、うらやましい」って思われるかもしれない。

たしかに今は楽しい。でも最初はそうでもなかった。

だいいちに、彼のaccessは96年に終わったままである。

ファンから石つぶてが飛んできそうなイチャモンを平気で言う。最初アンチかと思ったくらいだ。
相手が夫でなければ、私が先陣きって石つぶてをお見舞いしている。

そんなだったのに、半アンチ男の言動が少しずつ変わりはじめた。

いきなり目がさめた one day afternoon

休日の午後、何の前触れもなく突然accessの曲が爆音でかかるという事件が起きた。

びっくりした。いやこんなん誰だってびっくりする。

最終的にオザケンで中和されてしまったけど、現ファンでもない男が「みずからの意思でaccessを聴く」なんて、半魚人がヒトになりました級のステップアップである。

これまでにもaccessを口ずさんではいたけれど、その頻度が激増した。
そして口ずさんだあと正気に戻って「何してんだ、オレ……」とうなだれる。これがだいたい1日3セット繰り広げられる。

accessを聴くのも、口ずさむのも、突っこんだらやめちゃいそうだったから何も言わないでおいた。
寝る子は育つ戦法である。

ファンなの? アンチなの?

年末のことだった。
彼が帰宅するなり「ただいま」も言わないで「大ちゃんがマツコの番組出るって!」と部屋に駆け込んできた。
自分が嬉しいのか、私を喜ばせたいのか。配偶者でも判断しかねる表情だった。

当日などは「あ! もう始まってるんじゃない!?」とリモコンを掴み、一生懸命チャンネルを回しはじめた。
「9時からだよ」と私が言う。
私の言葉を信用しない彼は、番組表を確認する。
そして何事もなかったようにリモコンをテーブルに置いた。
何なの。

番組がはじまったらはじまったで「へぇ~」なんて嬉しげにあいづちを打っている。
そのわりには、大ちゃんが弾くのをちょっとミスると嬉しそうにする。

ファンなのか。アンチなのか。
どういう神経をしているのかさっぱりわからない。

夢見る少年

先日、accessライブ配信動画を彼と一緒に見た時の「愚痴的エントリ」を書いた。

littleray.hatenablog.com

がっかりしながら書いたエントリのため、ほぼ私の愚痴で構成されている。

が、合間合間ではそれなりにチラ見していた (めっちゃスマホいじりくさってたけど)。
思い返せばなかなかおかしいことを言っていたため、以下にまとめた。

* * *

「大ちゃんの衣装高そう。あれに金かかってるよ」

「ていうかどうなってんの、あの服」

「大ちゃんが移動した」

「ピアノに座った (実況?)」

「ねえ、大ちゃん白タイツ履いてない?」

「大ちゃんの髪型モーツアルトみたい」

「そう、弾けるんだよねこのひと」

「高くないじゃん (20万のイスにたいし)」

「でしょー? そうだよ (20万は高くないと認めた大ちゃんにたいし)」

モンタージュばっか弾いてない? (てめーが見てねーからだろ)」

「オレも大ちゃんみたいなマスクほしい。買って」

「シーケンスみたい (弾くのが上手くて打ち込みに聞こえるらしい)」

「ずっと同じ強さで弾いてる (同上)」

「くそ、やっぱ弾いてる (当て振りだと思いたいらしい)」

「あっ間違えた間違えた!! ミストーンした! (めちゃくちゃ嬉しそう)」

「上手いなー……小室さんもあれくらい弾けたらな…… (いっつもこれ言う)」

「80点 (まだこんなもんじゃないらしい)」

「オレ、大ちゃんのローディーでいいから行ってみたい」

* * *

念のために書きくわえておく。
我々は大ちゃんのソロライブを観ていたわけではない。

HIROにたいする彼の無関心さは、むしろ感心するほどだった。

もうひとつつけ加えておくと、彼の口から「ローディーでいいから」なんて言葉をこの20年ではじめて聞いた。
彼は音楽で身を立てるプロである。相手が大ちゃんならセッティングだけでもいいから行きたいなんて、もはや単なるミーハー野郎ではないか。

 

「プライドはないわけ?」と私は聞いた。

「ないね」彼はきっぱりと言った。

 

たいして熱心に観てたわけでもないのに、なぜ。

いたいけなアラフォー男子を、一瞬で夢見る少年に変えてしまう浅倉大介
これぞまさしくDAマジックである。

 

<後編へつづく>

littleray.hatenablog.com