8月某日、accessの配信ライブ (タイムシフト視聴) を夫と観た。
なんて書くとレビュー記事みたいですけれど、レビューではございません。ただ「観た」ってだけの日記です。
そういう夫婦もいるんだと思ってくださるとうれしいです。
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梅雨明け頃から、夫が急激に忙しくなった。
真夜中すぎに帰宅、未明まで作業。2時間ほど寝て、家を飛び出していく。そのまま何日も帰ってこない、そんなのが日常になった。
「accessの配信ライブ、一緒に観れない? 29日までなんだけど」
メッセージを送ると、翌日「ごめん、しばらく帰れない」と返ってきた。
長く顔を見てない。会話はぐっと減った。生きているのか、どこにいるのか、いつ帰ってくるのかも知らない。
コロナ前の生活に、あっさり戻ってしまった。
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8月のある夜、予告なく彼が8時前に帰ってきた。
トイレのドアをバァン!と開けて「accessの!!エレナイ!!観よ!!!!」と叫ぶくらいにはギアがあがった (わかったから閉めてと言われた)。
ついでに「何か食べる?」「ワイン飲む?」なんて、クリスマスでもやってきたような気分でいそいそうきうきしてしまった。
とにかくライブを観てほしかったから、オープニングトークをまるごと飛ばした。
台所でごはんの準備をしながら、そっと彼の顔をうかがう。びっくりするくらい怖い顔をしている。眉間にしわ。腕組み。
夫はライブにきびしい目を向ける。ふつうでないというか、クソめんどくさい。
わかっちゃいたけど、今回もなんのかんのと文句をたれていた。
かつ、夫はふつうの人とは注目する部分がまったく違う。真剣な顔で何を見てるのかと思ったら「MacBookのヘッドホン端子に何がつながっているのか」の考察だった (どうでもいい)。
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どうしてわたしは、週末に一人でゆっくり観るより、夫と一緒に観たいんだろう?
ボヤキのせいで集中できないし、ものすごく見逃してしまう。MCの内容も覚えてない。
最初はコスパ感覚のせいだと思っていた。二人で見れば、気分的に半額になる (わたしは世の中でいちばん「半額」という言葉が好きだ)。
でも実際に夫とライブ映像を観ていて、違うと気づいた。
彼が自然かつ自発的に、「大ちゃんが」「HIROが」って言うのが、すごくうれしいからだ。
二人が昔とくらべてどうの、なんて野暮は言わない。HIROと結婚したいと言っても、はいはいと流してくれる。どんなに忙しくても、妻の興味に目を向けてくれる。
彼が思ったことをぽんぽん言うのは、わたしがそんなのを聞いたってなんとも思わないことを知っているからだ。
だからどんなボヤキを聞かされても、そのためにライブの大部分を見逃すことになっても、彼の「大ちゃん」「HIRO」にころりと許しちゃうのである。
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翌朝、夫にすかさず「いちばん印象的だったシーンは?」と聞いてみた。
「線香花火をさかさまに持たされて、火がつかなくて残念がってる大ちゃん」
まことに残念ながら、そのシーンは見逃している。
見逃したわたしもどうかと思うけど、ライブ以外のシーンをまっ先にあげる夫もどうかと思う。
「そうじゃなくて、ライブだよ。パッと思い浮かぶシーンでいい」
「うん…… (腕組み5秒) ……あれ、なんでだろ。なんも思い出せない」
「はあ? ちょっと……最後の曲さあ、HIROめっちゃカッコよかったでしょ、わたしあの曲のHIROが (1分ほど早口に語る)」
「ごめん、まったく覚えてない」
まあいいや。名前を呼んでくれるなら、多くは望むまい。
次の配信ライブも、できるならまた一緒に観たい。で、彼の「大ちゃん」「HIRO」に一人でにやにやしたい。
▼ライブ初日に行ったときの覚書