君は世界に一人だけ

君は世界に一人だけ

感じたことと考えたこと

標語とかじゃなくて | 2023スーパーGT第3戦@鈴鹿450km

あんなに後味のわるいレースは、いつぶりだろう。

昨日 (6/4)、スーパーGTの第3戦が鈴鹿サーキットで開催された。
スーパーGTにしては順当なというか、静かなレースだった。とはいえ残り20周も残っているし、GT300クラスは上位3台が一秒以内に収まっているし、ピットインするたびにじりじり後退するGT500の100号車にも気を吐いてほしかった。

GTがこのまま終わるわけない。最後に一波乱起こる、ちょっと寝ようかなと思った、そのときだった。

画面がシケインに切り替わった瞬間、シケイン前のタイヤバリア全体が勢いよく持ち上がり、壊れた87号車がカメラ手前のエスケープゾーンに抜けていった。大きめのクラッシュではあるものの、以上終わりと思っていたら実況のサッシャさんと解説の本山さんが「左にもいる」と言う。

画面の左、タイヤバリアあたりに黒い、破片の山みたいなものが見える。どこにも車なんかない。あとから知ることになるのだけど、それは車の原型をとどめていない、モノコック(骨組み)だけのスクラップだった。だけどそのときは、ただの黒い山にしか見えなかった。

画面がメインストレートに切り替わると、現場をまったく映さなくなった。クラッシュのリプレイ映像も流さない。いつからか、スーパーGTはクラッシュ映像をリプレイしなくなった。サッシャさんが「クラッシュしたのは23号車MOTUL AUTECH Z、ドライバーは松田次生選手」「ドライバーの無事は確認中」と伝えた。

5分経っても状況が伝わってこない。画面はレースのプレビュー映像、でもそんなのひとつも頭に入ってこない。ドライバーが無事かどうか、それだけを確認するのにどうしてこんなにかかるのか。すぐに確認がとれないほど、救出できないほどひどい状況なのか。

レースという性格上、クラッシュはもちろん起こる。たった一ミリの間違いで、ときに息がとまるようなクラッシュが起こる。だけどGTのレース車両は市販車よりも安全で、ドライバーが死ぬなんてことは絶対に起こらない、100パーセントそう信じてきた。
どうして現場を映してくれないのか。現場を映さないのは、ドライバーが亡くなった場合にそなえて衝撃映像を残さないためなのか。ものすごく怖くなって、涙が出た。

ドライバーは無事だった。痛みを訴えてはいるものの、外傷もなく意識もあるという。安心して、また涙が出た(月経前だから情緒不安定なのです)。

ドライバーが無事と知ると、なぜこんな事故が起こったのかを知りたくなる。リプレイ映像が流れないから、何がどうなったのかわからない。事故には300の車両が絡んでいた。どうせ300が悪いんだろうと思った。300の新人ドライバーが、背後からきた23号車に気づかず車を寄せたに決まってる。

そうやってひとり憤慨していたら、事実はまったくの逆だった。
23号車は、130Rのイン側に余裕が残っているにもかかわらず、なぜか車両を右に寄せて走行。行き場をなくした300二台のうち、30号車と23号車が接触、23号車が吹っ飛び、タイヤバリアに激突した。

www.as-web.jp

事故に絡んだ300の2台には松浦選手(87号車)と織戸選手(30号車)が乗っていた。この大ベテランふたりが500に気づかず車を当てるなんてことは、これはもう絶対にありえない。
23号車には、危険走行のペナルティがくだった。どうせ300が悪いんだろうと決めつけたのを猛省した。


後味がわるいのはそれだけじゃない。

23号車のクラッシュで、レースは赤旗終了となった。
だけど500のトップを走行していた3号車Niterra MOTUL Zの裁定をどうするか問題が残っている。

第3戦は「2ストップ (2回ピットインすること)」が義務付けられている。3号車は1ストップしか消化していなかった。

個人的には、「たなぼた優勝、だいっきらい」派であるため、タイム加算が筋と思う。とはいえ、3号車はこの事態を見越してピットインを遅らせていたわけではない。ルール通りに走行していたら赤旗終了になった、それだけのこと。

協議の結果、3号車の優勝が決まった。理由は、赤旗終了になった場合の残りストップの扱いがレギュレーションにないから。信じられないけど。

表彰式もおこなわれ、ちくしょうめ、ともやもやしていたら、夜のうちに結果がくつがえった。10チームによる抗議の結果、3号車に60秒のペナルティが加算された。

これにより優勝は19号車 WedsSport ADVAN GR Supraの手に。近鉄電車の中で、国本選手は泣いたそう(ていうか電車通勤なんや)。

3号車に60秒加算が決まって、せいせいするかと思いきや、もっともやもやした。なぜもっと早くに60秒加算を決めなかったのか。表彰台でシャンパンファイトまでした3号車が、あまりにかわいそうすぎる。何重にも後味のわるいレースだった。


松田選手が無事でよかったです、とにかく。レースには命がかかっている、あたりまえだけど、でも標語とかじゃなくてほんとうにそうなんだ、一ミリでも何かが違ったら、ほんとうに死ぬんだってことを、思い知ったレースでした。