近所をうろうろしていると、空き地のまわりに、緑色ののぼりがそこらじゅうに立てかけてあった。
近づいて読む。「レンタル農園はじめました」。
どきっとした。レンタル農園。なんてすてきな響き。
それまで野菜を育てたいと思ったことなんて一度もなかったのに、「これだ、わたしに足りないのは土だ」と確信した。
歳をとると、土着的なものに帰りたくなるというか、土に触れたい欲求が高まるのかもしれない。定年後に土いじりをはじめる人の気持ちが、このときようやくわかった気がした。
毎朝畑の様子を見に行っては収穫しそれを食べるという妄想が止まらない。小一時間妄想したあと調べてみると、レンタル料が月8,000円だった。検討する余地もなくあきらめた。
土いじりの代わりに、というわけでもないのだけど、その後ベーグルを焼くようになった。
ベーグルが好きというのではない。そもそもふだん食べない。パンを焼くのに憧れはあるけど、そんな生活からはほど遠い。
ならどうしてベーグルなんかを焼きはじめたのか? 生来のケチ根性が要因です。
ある日いつ買ったかも覚えてないベーグルが、冷凍庫の奥から発掘された。「気分のいいとき」あるいは「気分の落ちこんだとき」に食べようと大事にとっておいたもの(ベーグルってお高いから)。でもベーグルを食すのにちょうどいい気分なんて発生しないから、そのままほったらかしになってた。
焼いて食べたら、案の定まずい。「高かったのに」と「この程度なら作れるんじゃないか」が同時に浮かんで、浮かんだら止められなくて、ネットのレシピを参考に焼いてみたら、あっさり焼けてしまったんでした。

ベーグルが焼けるって、こんなにうれしいもんかとびっくりした。うつうつしてたのが急に元気になる。「次は何を焼こうかな」ってワクワクする。そのうちお店とか出したいなーとか考える(何かを作ると毎回出店の妄想をする)。
けれどもベーグルを焼くには、時間がそこそこかかる。計る。こねる。ふくらます。茹でる。焼く。3~4時間かけて作って、食べるの5分。食べきれないから冷凍するんだけど、焼きたてじゃないからあんまりおいしくない。ここが悲しいところで、人にあげても、たいして喜ばれない。
無駄といえば、無駄かもしれない。でも作ってる最中は、この上なく楽しい(ブログを書くのと同じですね)。
考えてみると、お菓子を焼くより、パンを焼くのは土着的で、原始的。そんな意味では、土いじりにも近いかも(無理やり?)。
土いじりから遠いような近いような、ベーグル作り。
農園は借りられなかったけど、しばらくは粉との格闘を楽しもうと思います。

今週のお題「自分で作った◯◯」