前回、愛用している万年筆について書きました。
littleray.hatenablog.com
1本目を「人生の相棒」と抜かしておいて、あっさり2本目を紹介するのもどうかと思いつつ、最近入手した万年筆について語りたいと思います。
太字へのあこがれ
先述のとおり、私には愛用している万年筆がある。遺品リストのスーパーエースである。15年間、その1本に満足していた。
にもかかわらず、もう1本欲しいと考えたきっかけは「太字へのあこがれ」だった。
初代のペン先は「F」。細字にあたる。実用向けで、書きやすくて読みやすい。すべてがちょうどいい、優秀なペン先だ。
一方で、ちょうどよさは退屈さも生む。すべてにおいて調和がとれていると、何かもの足りなく感じる。
細字ではもの足りない。もっと濃淡のはっきりした、いかにも万年筆というセクシーな筆跡で書きたい。
人生には適度な刺激が必要だ。何でも太ければいいという問題ではないけれど、どういうものであるかを知っておくのはいい人生経験になる。
というわけで、太字の購入を決めた。
どんな気持ちで書きたいか、で万年筆を選ぶ
せっかくだから他のメーカーのもためしてみようかな。ちらっとそう思ったけど、やめた。
この世界には、すさまじい種類の万年筆が存在する。まじめに選んでたら寿命がつきてしまう。できれば寿命がつきる前に使いたい。
というわけで、1本目と同じ「ペリカン」に絞った。
万年筆は嗜好品だから、好みのデザインを選ぶべき、と言われている。それはそうなのだけど、あまりにも選択肢がありすぎて、何を基準に選べばいいのかわからなくなってしまう。
そんな時は「どんな気持ちで文章を書きたいか?」でデザインを選んでみるといいかもしれない。
ポジティブな気持ちで書きたい…ド派手なオレンジ。
静謐な気持ちで書きたい…深いブルー。
気分をリセットして書きたい…白。
色は感情に働きかけるから、「どんな気持ちで書きたいか?」を基準に選べば、大きく外れないと思う。
今回は「毎回真っ白な気持ちで書きたい」という思いから、シンプルでさわやかな「白縞」に決めた。
まずパッと見がかわいい。緑縞では金の部分が、銀に加工されているのも「分かってんじゃん」って思う。
軸が白と半透明のストライプになっていて、インクの量がほどよく見えるところも便利。
なんとなく骨っぽいところもクールで気に入った。
遊びの1本
太字は想像よりずっと太くて、はじめて書いたとき笑ってしまった。
たっぷり出るインクのおかげで書くのがもっと楽しくなった。
インクの濃淡も美しい。ペン先が変わるだけで、世界はがらっと変わる。
太字は実用的なペンじゃない。書くことを遊ぶペンだ。
遊びの相手がいるから、本命がより愛おしく感じられる。そういうものである。
万年筆の世界は魅惑的で、うっかりすると骨抜きにされる。もうしばらくは、この世界から抜け出せそうにない。
* * *
万年筆でものを書いていると、何とはなしに肯定的な気分になります。
万年筆も、万年筆でものを書く時間も、そうした時間を過ごそうとする気持ちも、ぜんぶが好きで、心地いい。そう思わせてくれるモノは、万年筆をおいてほかにありません。
出会えてよかったと、あらためて思います。