漆器がほしい。それも、ふだんづかいできるもの。
12月に入ると、毎年そうして漆器を探しまわっていました。
なぜなら、年末年始には漆器をつかいたくなるシーンがあるから(年越しそば、おぞうに、くらいだけど)。
「山岸厚夫展」で漆器のお椀を手に入れたのは、三年前。
いらい、毎日愛用しています。
錦壽 (山岸厚夫) の漆器
「錦壽 (きんじゅ)」は、河田塗りの産地・福井県鯖江市の本漆塗り専門工房。
その錦壽を営むのが、漆職人の山岸厚夫です。
錦壽の作品には、3通りあります。
- 作家・山岸厚夫作品
- 錦壽オリジナル作品
- 錦壽スタッフ作品
大きな違いは「素材」です。上から木製、樹脂製、金属・ガラスなど。
上のものほど高級で、わたしが購入したのは「2. 錦壽オリジナル作品」です。
いいところ①ジーンズ感覚で使える
錦壽作品の、なにがいいのか。
ほんものの漆器でありながら、気がねなくふだんづかいできる「ジーンズ感覚の漆器」である点です。
代表である山岸厚夫がジーンズ漆器をつくるきっかけになったのは、20年前に個展を開いたときのこと。
お客さまから手入れのことばかりを質問されたのをきっかけに、「もっと気楽に使える漆器を」と考えるようになったそうです。
キズが付くのが怖いなら、最初からキズだらけにしてしまおうという逆転の発想です
つまり使い古した雰囲気を作るのです
ジーンズはぴかぴかの新品よりも、履き古したのがカッコいいですよね。わざとダメージをくわえてみたりして。
山岸厚夫の漆器には、そんなジーンズに通底する感覚があります。ざっくりした塗りがかっこいいし、がんがん使える。いわゆる「ザ・漆器」にはない魅力です。
いいところ②剥げない
すぐに剥げがちな漆器。そんなデメリットも、研究を重ねて、剥げにくいうつわを生み出したそう。
たしかに、三年間毎日酷使しているというのに(なんならボウルがわりに卵を混ぜるのにも使う)、剥げはほとんどありません。
いいところ③高すぎない
山岸厚夫作品は木製のため、高級品です。
錦壽オリジナルの漆器は、一万円以下。なぜ安価かというと、素材が木製でないからです。
木粉入り樹脂製品やABS樹脂などを使い、塗りの雰囲気はそのままに価格を抑えたもの
樹脂製であるメリットもあります。「うっかり落としてしまったという場合でも、木製品に比べてワレにくく、凹みやヒビが入りにくい」そう。
高級品ではないけれど、モノと価格のバランスがとれた、ちょうどいい漆器だと思います。
ちなみに無印良品で扱っている漆器「河和田塗り」シリーズもここ、錦壽の作品なんですよ。
「河和田塗り」シリーズはジーンズ感覚の漆器ではありませんが、そのぶん手の届きやすい価格帯になっています。
無印良品にて漆器の販売が開始されました! - 【うるし家族】 福井県で漆器の塗り加工、販売をしています。特注も承っています。
漆器のよさ
漆器は、使うほどにつやが増していきます。
そう聞いて、最初はぴんときませんでした。でも、同じシリーズのサイズ違いを購入したとき、色つやの違いにびっくりして。
毎日使っているうち、いつの間にかつやつやに育っていたのでした。比較しようがないから、気づかなかった。
漆器の手入れ
漆器の手入れは、ひとの肌と同じに考えると、よくわかるそうです。
濡れたままほったらかされると、いやですもんね。だからしっかり拭いてあげる。
それだけで、けっこういい塩梅に育ってくれます。
(ちゃんと拭いてあげないと、水垢みたいなのが表面に残ります。とくに買ってすぐのうちは。何年も使えば、うっかり拭かずに放置しても跡になることはありません)
色どうする問題
漆器には、たいてい黒と赤があります。
わたしは「赤」を選びました。
黒だと、どうもシックすぎるのです。
ふだんの食事に赤い漆器なんて、と尻ごみするのはもったいない。
卵がけごはんでもなんでもおいしそうに見える、というところに、赤漆器の底力があるのです。
サイズどうする問題
4.5多用椀
サイズに迷ったら、4.5寸がおすすめ。万能選手です。汁ものからどんぶり、麺もいける。年越しそば、おぞうになんてむちゃくちゃ絵になります。
育ち盛りの部活少年少女には足らないと思いますが、そこはおかわり対応で。
6寸多用椀
次におすすめなのが、6寸多用椀。
お椀というより、深皿に近いです。とにかくたくさん入るから、部活少年少女も満足のサイズ(たぶん)。
あえて小盛中盛でワンプレートぽくするとおしゃれです。カレーとか。参考画像を出せず申し訳ないですが。
それでもサイズに迷ったら、実際に新聞紙で作ってみるのをおすすめします。
とくにご家族分となると、高い買い物ですから。
ハレの日はもちろん、ケの日も使える、錦壽の漆器。
食器なんて、これひとつでこと足りるんだよなあ、ほんとは。使うたびに、そう思います。