BTSが活動休止を発表した。
活動休止といっても、あくまで「次のフェーズに向かうための前向きな小休止」といったニュアンスで、解散ではないらしい。
これまでとくべつに見逃されてきた兵役も、年内には就かなければならないという。
そのうえ全員同時の入隊でなければ、5年は完全体にならない。
かの国は、グラミーに指先が届いたアーティストでさえ、兵役から逃れられない。
ファンでなくとも衝撃のニュースだった。
K-POPアーティストは商品だ。株券といったほうが実情はちかいのかもしれない。
芸能プロダクションはデビュー前に投資したお金を、デビュー後に回収する。休みを与えず、音を上げるまで (上げても) スケジュールをつめこむ。
「10年間『BTS』の活動をしていて、物理的にスケジュールをこなすことに必死で、自分自身が成長できない」
BTSのリーダーはそう語った。
「K-POPアイドルのシステム自体が人間を成熟させてくれない。(略) 常に何かを発信していないといけないから、自分が成長する時間がない」
ファンを飽きさせないために、コンテンツをこれでもかこれでもかと作りつづける。成果は即刻、数値にあらわれる。
PVの再生回数は億超えで当たり前。今度は億に到達する「時間」で人気度を測られる。
おわりがない。ほんのすこしでも人気に陰りがみえたら、叩かれる。
「デビューさえすれば、すばらしい景色が広がっていると思ってた。そこから楽しい人生がはじまると」
数年前、あるK-POPグループのライブで、ひとりのメンバーがファンに心情を吐露した。
「でも現実は、壁しかなかった。毎日毎日、必死にやっても……」
声をつまらせて、彼はその場に泣き崩れた。
「どうか離れていかないで。そばにいて。お願いします……」
ファンをつなぎとめておくためならなんでもする、そのためなら殺人的スケジュールもいとわない。
だからとまらない。とめられない。
歴史的な成功をおさめたBTSの活動休止をもってしても、K-POPのシステムはゆるがない。
むしろ、BTSが事実上スターダムからおりることで、次のキングをめぐるドッグレースがはじまる。
なにがあろうと、たとえアーティストが何人死のうと、競争は加熱していく。ほとんど暴力的に。
それでは彼らは、いったいいつ自分と向き合うんだろう。
彼らだけでなく、彼らを消費するファンも、いつ自分とつながるんだろう。
なんて、ついそんなふうに考えるのは、としを取っちゃったせいかもしれないですね。