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感じたことと考えたこと

残酷なレースと、コンビ愛。【スーパーGT 2021最終戦】

残酷なレース。

11/28 (日) 富士スピードウェイで開催されたスーパーGTの最終戦は、史上まれにみる大逆転劇となりました。

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感情的に落ち着いたので、最終戦について書いておきたいと思います。

順風満帆の決勝レース

前年チャンピオンは今季も速かった。

「気づけばスタンレー」といわれるほど、1号車 (とくに山本くん) は圧倒的に速く、そして強かった。

GT500ランキングトップの1号車にとって、最終戦の決勝レースは「順調」というほかない展開だった。

タイトル圏内の4位を走行。タイトル獲得を直接的に脅かすライバルは後方に沈み、一台はリタイヤ。

無理に戦う必要さえなく、もらったも同然のレースに見えた。

油断していたわけじゃない。でも去年の最終戦みたいな大惨事が、そうそう起こったりはしない。

2021年のチャンピオンは1号車。ホンダ初の連覇。
だれもが納得する結果となるはずだった。

51周目の悲劇

それは51周目に起こった。

メインストレートを抜けた第一コーナーで、GT300の55号車が止まりきれず、1号車に接触。1号車の右フロントを破損した。

1号車がコーナーを立ち上がる。問題がなさそうに見えたのは一瞬で、スピードを失った前年チャンピオンは後続車に次々とパスされていく。

ピットに戻った1号車は、すぐさまガレージに入れられ、ボンネットが外される。

映像が、コックピットに身を沈めたまま動かない山本くんを映し出す。バイザー越しの表情は見えない。

すでにタイトルの権利は失っており、もはや走る意味はない。

しかしこのホンダの絶対エースはシートの中で微動だにせず、マシンの修復を待っていた。

これ以上ない、最悪な結末

だれもが同じことを考えたと思う。

「これ以上ない、最悪な結末」。

300マシンが、こともあろうに500マシン、「最終戦」「連覇のかかった」「ホンダのエース車両」に追突するなど、かつて聞いたことがない。

GTに事故はつきものだ。

レースはときに残酷なものだし、それがファンを惹きつける大きな要因だともいえる。

しかしGTレースには、だからこそ「ぜったいに許されない事故」がある。

ホンダと1号車にとって、あまりにも残酷な幕切れだった。

予想だにしない大逆転劇

1号車が戦線離脱したと同時に、同ホンダの8号車、野尻くん (現スーパーフォーミュラ王者) に連覇の夢が託された。

終戦の焦点は、5位走行の8号車が、3位まで巻き返せるかに当てられる。

しかし、このランキング2位のチームには、いつもなにかが起こる。

今回はなんと、ドライバー交代時にドアが外れていた。

ドアが外れるなど聞いたことがない。さすがは8号車と言わざるをえない。やることなすことぜんぶが想定外である。

さすがのフォーミュラチャンピオンも、10秒以上のロスは巻き返せなかった。猛追およばず、6位でチェッカーを受ける。

これをもって今季勝利のなかったポイントランキング「5位」の36号車がタイトル獲得。予想だにしない大逆転劇となった。

(トヨタ勢がTOP5独占という、ホンダと日産陣営にとって屈辱的な結果だったことも言い添えておきたい)

「光の当たる仕事をしているから、謝るのは当然」

自分のミスでない、もらい事故。それでも山本くんはすぐさま無線でチームに謝ったそう。

その理由を「光の当たる仕事をしているから」と語った。

僕は光の当たる仕事をしているので、こういうことも受け入れないといけない立場です。

最後にハンドルを握っているのは自分ですし、(……) 何千人という規模の人がクルマを仕立ててくれて走らせて貰っているので、調子のいいときだけ『ありがとうございます』と言うのではやっぱりダメだと思います。

チェッカー後、36号車の坪井くんをハグで讃えた1号車の山本くん。

ドライバーズランキングの3位表彰台でも、彼は笑顔を崩さなかった。

負けたレースでその人の素性が出ると思います。
(……) 自分の振る舞いが正しいかどうかは他人が判断することですが、自分が今できる精一杯の振る舞いをしたつもりです。

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55号車・佐藤くん「申し訳無い気持ちでいっぱい」

山本くんがピットに戻ったとき、55号車のドライバー、監督、アドバイザー、エンジニアがすぐさま謝罪に訪れたという。

1号車にヒットさせた、佐藤くんのコメント (全文)。

接触してしまった1号車の皆さま、チームの皆さまには申し訳無い気持ちでいっぱいです。本当に申し訳ありません。レースに関しては良いペース、流れで気持ちが先走ってしまい、強引な追い抜きをしてしまった為に接触してしまいました。これから同じことを繰り返すようではドライバーとして駄目なので、気を引き締めてオフシーズンにしっかりと勉強して二度と同じことを繰り返さないように努力していきたいと思います。

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今回の件でもっともショックを受けているのは、1号車に接触させた佐藤くんだろう。

こうした事故は、やっちゃった側のトラウマが長く尾を引く。
目の前の戦いに気をとられて500に当てるなど言語道断の世界で、彼が今後どう飛躍していくか注目したい。

1号車のコンビ愛

涙なしには見られない抱擁

これまでさんざん、GTコンビの抱擁を見てきたけれど、これほど胸を打つ映像ははじめて。

傷ついた動物同士が慰めあうような……。
ぐっとくる抱擁です。

「牧野と一緒に獲りたい」

どこかで誰かが「牧野と一緒に獲れ」と言っているのかなと思います。

jp.motorsport.com

山本くんの相棒・牧野くんはシーズン序盤、入院のために参戦がかなわなかった。

1号車がチャンピオンを獲れたとしても、GTのレギュレーション上、表彰台の真ん中に立つのは山本くんひとりとなる。

彼(牧野)のことを思うと、やっぱり素直には喜べないんだろうなとずっと考えていました。

正直、そのあたりは完全に割り切ってやっていると思っていたからおどろいた。
これぞGTのコンビ愛。

僕とチームのタイトルのために何ひとつ文句を言わずにひたむきに頑張ってくれていたあの姿勢は、みんなの刺激になりましたし『コイツのために頑張ってあげたい』とみんなが思わされた。

だから来年、キレイにふたりで、チームと一緒にタイトルを獲りたいです。

山本くん、牧野くんとのツーショットをSNSに投稿

1枚目:ホンダの2トップチーム
上:8号車 福住くん 野尻くん
下:1号車 牧野くん 山本くん

2枚目:かわゆいツーショット
左:牧野くん 右:山本くん
(プライベートでは「ただすけ」と名前で呼ぶんですね)

 
 
 
 
 
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牧野くん、山本くんとのツーショットをSNSに投稿

 

彼らは来季「100号車」に戻ります。

※モタスポ界では前年チャンピオンがゼッケン「1」をつけます。

100号車、山本・牧野コンビの応援をぜひよろしくお願いいたします!


予測不能

嘘みたいなことが現実に起こる。

エキサイティングで、残酷。

やっぱりスーパーGTが大好き。

今季も素晴らしいレースと感動をありがとうございました。

来年、4月の開幕戦を楽しみにしています。

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▼最終戦まとめ
・1号車のコンビ愛
・チェッカーまでがレース