君は世界に一人だけ

君は世界に一人だけ

感じたことと考えたこと

優しくなりたい

「幸せな人々の共通点は何だとお考えですか?」

ステージ上の外国人監督に、私はそう尋ねた。

アップリンク渋谷で開催された、ドキュメンタリー映画トークセッションでのことだった。

映画は「幸せ」をテーマにした海外作品だった。幸せについて強い関心を持っていた私は、質問コーナーで真っ先に手を上げたのだった。

通訳に耳を寄せて監督はうんうんとうなずき、私をまっすぐに見つめて答えた。彼の言葉を、通訳の女性が訳してくれた。

「『ぼくが出会ってきた幸せな人の共通点はひとつ。"優しい人であること" です』」


* * *


彼の回答に深く感動したにもかかわらず、私はすぐに忘れてしまった。

何年も経って思い出したのは、走り書きのメモを発見したからだった。

当時と同じか、それ以上に胸を打たれた。そして自分が、いまだ同じ悩みをかかえているのにもおどろいた。

"幸せな人は、優しい人"。

人間を「優しい」「非・優しい」に分けるなら、たぶん前者グループに入れてもらえると思う。

なのに、心からの幸せを感じた経験は数えるほどしかない。幸福を感じるセンサーは常に圏外だった。幸せを感じられるはずの場面で、私は何も感じない。


* * *


"幸せな人は、優しい人"。

今ならわかる。幸せな人は、自分にも優しくできる人だ。

心の声に耳を傾けて、自分の気持ちを尊重できる人。

傷ついた人にそうするように、自分をケアして慈しめる人。

自分に優しくしないかぎり、幸せは感じられない。幸せを感じられなければ、誰とも深い関係を築けない。

「理由はないけど、そこはかとなく幸せ」。

自分に優しくするだけで、本当にそんな感覚を持てるかはわからない。

でも優しくなりたい。優しい心持ちでいたい。相手にも、自分にも。