君は世界に一人だけ

君は世界に一人だけ

感じたことと考えたこと

ポケットに絆創膏 |「自己肯定感の教科書」感想レビュー

図書館から、予約本の入荷メールが届いた。

わりかし暇そうにしている夫に受け取りをお願いしたら、2冊持って帰った。

一冊は「フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠」(これが読みたかった)。
もう一冊は「自己肯定感の教科書」。

『自己肯定感の教科書』?

「これ、間違いじゃない?」私は夫に言った。「予約してないよ、こんなの」

知らんがなという顔で、彼は「知らないよ。2冊渡されただけだから」と言った。

自己肯定感ね……。厚い本をぱらぱらとめくり、棚の上に置いた。借りてきてくれた夫には悪いけれど、興味もない啓蒙書を読むひまはない。私はすぐ本の存在を忘れてしまった。

週末に掃除をしていたとき、くだんの「自己肯定感の教科書」が目に入った。

自己肯定感の本なんか、何の役にも立たないのを私は知っている。

この手の本を、過去に何冊も読んだ。だけど自己肯定感の本を何冊読んだって、何も変わらなかった。地に落ちきった肯定感はただの一ミリも上がらなかったし、むしろ変えられない自分に失望するばかりだった。

私はもう二度とこの手の本を信じない。

とか言いながら、そのときの自己肯定感はとても高いとはいえない状態だった。

週末なのに、天気がいいのに、花粉症でもないのに、一歩も外に出ようとしない。何のかんのと面倒くさがる自分に嫌気が差してくる。自分に嫌気が差してくると、何もかもがいやになる。「どうせ私なんか何もできないで死ぬんだ」とか考えだす。

読んだって、何かが変わるわけもない本を読んでみようかと考える自分もいやだった。こんなので自分を好きになれるならノーベル賞もんだ。

などとぶつくさ言いながら結局、週末のうちにあっさり読み切ってしまった。

新しい発見

「自己肯定感の教科書」は、教科書と銘打たれているだけあって「自己肯定感とは何か」から、自己肯定感にまつわるアレコレが体系的にまとめられています。

いっちばん衝撃的だったのは「少しずつ自分が変わってきたと自信を持ちはじめた頃こそ注意が必要」の一文。私やないかい!

いわく「不安、恐れ、自信のなさから一気に低下することがある」とのこと。リアルに予感できるし、すごくこわい。

「もっと早くに知りたかったよ!」ってトピックが盛りだくさん。それらをぜんぶ書きだすとめちゃくちゃ長くなってしまうので、心の動いたポイントを3つにまとめました。

1. 自己肯定感は「変動する」

なんとなくのイメージで、世の中には自己肯定感の「高いひと」「低いひと」がいて、「高いひと」はそれなりにずっと高いんだろうなと思っていました。

でも「自己肯定感が常に高くて一定」、なんてひとはいません。

自己肯定感は変動するもの。日により時により、上がったり下がったりします。
誰でも低下する日はあるし、運悪く低下状態で長く固定されてしまう可能性だってある。
ずっと一定じゃないのです。

なんだかPMS (月経前症候群) みたい。こっちの希望や考えとは関係なしに、気まぐれに変動するなんて。

そういえば、私の自己肯定感がもっとも高くなるのは日中、会社にいるときです。夕方から徐々に下がって、夜になると心が不安定になって自己肯定感も低下します。とくにこれといった理由もなく。

だけど「自己肯定感は変動するんだ」とわかってから、心持ちが変わりました。

自己肯定感が低下しても、あくまで「一時的な状態」。今の気分は、一時的で主観的なものに過ぎません。

低下していると、ものごとをネガティブに受けとめてしまいがちです。でもそれも、あくまで一時的な判断を下しているだけと知っておくと、気持ちがらくになります。

2. 自己肯定感で大切なのは「客観視」

自己肯定感において、まずは「自己認知」が大切だなと感じました。

人間は、自分のことをいちばん理解できないそうです。
ノーベル賞を受賞した科学者でさえ、自分を客観視できない。人間は自分を客観視するのが苦手なのです。

理解できないから不安になる。自己肯定感が低下しているときに自分の状態がわかっていないと、不安は増すばかりです。

この本を読んで以降、ふとしたときに「今の自己肯定感はどのくらいか」を考えるようになりました。

仕事中、マグカップに手をのばすタイミングで「今どんな感じか」を考えます。
するとたいてい「けっこういい感じ」。けっこういい感じとわかると、何か幸福感を感じます。

一方、夜に部屋で過ごしているときは「なんかちょっと低いかも」。でも低下してるとわかるだけで、気持ちはけっこう安定します。自己認知、あなどりがたし。

自分の今の状態を知ることが、解決への一歩。自己肯定感がどのくらいなのかを把握しておくだけでも、意外なほど安心します。ぜひおためしください。

3. 自己肯定感を高める論理的な「テクニック」

誰でも、自己肯定感の低下する日があります。

そんなとき「なぜ低下してしまうのか」「どうすれば少しでも高く戻せるのか」を知っていれば、「やっぱり私はだめなんだ」みたいな負のループに陥らずにすみます。

「自己肯定感の教科書」は精神論に訴えるのではなく、研究結果のデータに裏付けされた方法を論理的に伝えています。だから納得できるし、実践してみようと思える。
私も実際にためしてみて、習慣にしたい方法がいくつか見つかりました。

テクニックは大きく分けてふたつ。一時的にきゅっと肯定感を上げる「瞬発型」と、長期的にこつこつ高めていく「持続型」があります。

「瞬発型」は24個も紹介されています。科学的に根拠があるとなると、どれも効果が高そう。よくばって、ぜんぶためしてくなっちゃいます。

だけどまずは自分に合いそうなものをひとつ。
少しずつ習慣化していく方が、「ステップアップしてる感」を感じられて楽しく続けられそうです。

ちなみに私は書くことが好きなので、持続型の「その日のよかったこと3つを書く」をはじめてみました。3つも見つけるのは大変とわかってるから、すんごく小さいことでもオーケーにしています。

ポケットに絆創膏をつっこんで

自己肯定感の知識を持っておくのは、「ポケットに絆創膏をつっこんで生きる」ことだなと思いました。

ケガをしてから、絆創膏を探す旅に出るのでは遅い。ケガだけでも痛いのに、時間がたつとばい菌が入ってきちゃうかもしれない。

でもポケットにたっぷりの絆創膏があれば、転んでケガをしてもすぐ止血できます。ばい菌だってブロックできる。絆創膏がないよりは、一枚でも多く持っているほうが安心です。

ちょっと厚めの本だけど、わかりやすくてさくさく読めます。
「生きやすくなるかも」と言うと大げさだけれど、そのきっかけにはなるかもしれません。自己肯定感に悩んでいてもいなくても、すっごくおすすめの本です。
興味がありましたら、ぜひご一読ください。

何があっても「大丈夫。」と思えるようになる自己肯定感の教科書

 

後日談

この「自己肯定感の教科書」、なんと一年以上も前に予約していた本でした。

図書館からのお知らせメールで、当時「自己肯定感」にかんする本をいろいろと読んでいたとわかりました (まったく覚えてない)。

ものすごく悩んでいた時期には読めなくて、たいして悩んでない今のタイミングで読めたのはむしろラッキーでした。

すっごく悩んでいる時に読んだら、「今すぐ劇的に変わりたい」という焦りで空回っていたかもしれません。
さほど悩んでいない時期に読んだから、冷静にすっと受け取れたのだと思います。

私は「自分には能力がないから、自己肯定感を高く持つべきじゃない」みたいな考えにとらわれていました。誰かに評価してもらえないと、自分を認められなかった。今思えば、すごく苦しい考え方でした。

自己肯定感にずっと悩まされてきたけど、私の肯定感が上がったからって誰にも関係ないんだなってわかったら、かなりらくになりました。

今やっと、自然に呼吸できてる感じがあります。この状態になりたくて悩んでた数十年はいったいなんだったんだってくらい。

でも、どんなに今が安定していても、いつかは急降下する日がきます。こわいくらいリアルに想像できる。

そのとき少しでも肯定感を戻せるように、いまのうちに絆創膏をいっぱい用意しておきたいなって思います。