君は世界に一人だけ

君は世界に一人だけ

感じたことと考えたこと

もう一度アルバムを聴けた日

大失敗しちゃったってエントリを書いた。

めちゃくちゃ落ち込んだし、今も落ち込んでるけど、ひとつだけいいことがあった。

十年以上聴けなくなっていたアルバムを、もう一度聴けたのである。

* * *

話は太古の昔に遡る。

20代前半、私はどちらかといえばロックに傾倒していた。

特定のバンドに集中して聴くというより、国内外問わずいろんなバンドのアルバムを聴いた。
周りも音楽好きばかりだったから、誘ってもらってライブへもけっこう行った。

そのなかで、歌い出し一発でやられた新星バンドがあった。

歌声、メロディー、歌詞。
すべてが衝撃だった。

バンドはデビュー直後、またたく間にヒットした。ライブのチケットなんかまったく手に入らなかった。
赤坂ブリッツで宝くじみたいな倍率の当日券に当たったときには、わき目もふらずに号泣した。

そこにいるだけで心が震えるようなライブだった。
MCでボーカルが言った言葉を、今でも覚えている。

お前らから見たら、オレたちはステージで輝いて見えるかもしれない。
だけどお前らだって、お前らのステージで輝いてんだ。絶対忘れんな。

お前らみんな輝いてんだよ!、彼は何度もそう言った。
20そこそこの若者のハートに、彼の言葉はぶっ刺さった。私は涙を流しながら、今日のライブを一生忘れないと誓った。

彼らのインディーズ時代のアルバムは、私の宝物になった。
新しい挑戦をするとき、そのアルバムはいつも私を勇気づけてくれた。
あまりに好きすぎて、ここぞというときにしか聴けなくなっていたくらいだ。

だけど、ニキビがつぶれたり、彼のパンツを勝手に履いて怒られたり、病気が悪化したり、年齢を重ねて新しい挑戦ができなくなると、前のようには彼らのアルバムを聴けなくなった。
挑戦をやめた私には、もう彼らの曲を聴く資格がないように思えた。

(やがて日本語の歌詞そのものが聞けなくなって、偶然出会ったK-POPに救われることになる)

* * *

2020年12月。
私は新しい一歩を踏み出そうとしていた。十数年ぶりに、そのアルバムを聴く勇気が持てた。

電車の中でアルバムを再生する。

優しいアコースティックギター。繊細な歌声。
目から涙が溢れた。

尋常でない量の涙だった。今までどこに隠れてたんだ。

ああ、私まだこのアルバムで泣けるんだ。
本当はずっと聴きたかったんだ。
そう思ったらまた泣けた。

自分のなかにある火が、まだぜんぜん燃え尽きていないのを知った。

世の中を変えるだとか、たくさんの人をおどろかせるだとか、そんなすっごいことをやろうとしてるわけじゃない。
ひとに言うのも恥ずかしいくらいのベビーステップだ。

でも、ベビーだろうが何だろうが、一歩は一歩だ。

カッコ悪く失敗したって、
みっともなくたって、
オマエはオマエのステージで輝いてる。

そう言ってくれてるみたいだった。

* * *

記憶に埋もれたまま、聴かなくなってしまったアルバム。

後ろを振り返ると、そんなアルバムが道をつくっていた。

もとの場所に帰るためのパンくずみたいに。

私はやっとその存在に気づく。一枚一枚を拾い上げて抱きしめる。

今まで忘れててゴメン。

また一緒に歩いてくれるかな。もう、でっかい夢も見られないし、そう遠くへも行けないけど。

生きていくのにあんたたちが必要だって、やっと分かったから。