双眼鏡なんていらねえ。ずっとそう思っていた。
顔を見に来たんじゃねえ、俺は音楽を聴きに来たんだ、と。
そんなだったのに、このたびあっさり双眼鏡を買った。
- 双眼鏡を手に入れなければならない理由
- 双眼鏡ってやつの正体
- Vixen アトレックII HR8×32WP
- メーカーを決めておいたほうがいい理由
- 8倍がおすすめな理由
- 390gは重くない
- 想像の100倍見えるぜ
双眼鏡を手に入れなければならない理由
私が双眼鏡を買った理由はひとつしかない。
ツアー初日の公演で、大ちゃんの涙を見逃したと知ったからである。
大ちゃんがどれくらい泣くひとなのか知らない。毎回しくしく泣いちゃう繊細なひとなのかもしれない。
しかし100年のいちどの現象だろうが、毎回お決まりのパターンだろうが、涙は涙だ。
問題は、双眼鏡を持っていなかったばかりに、涙をみすみす見逃したという事実である。
* * *
このエントリを読んでいるひとに、私は問いたい。
ライブ中、大ちゃんが涙をうかべているとして、あなたはそれを見逃してもいいと思いますか?
「べつに見逃してもいい」というクールなロックンローラーは今すぐこのページを閉じてほしい。
あなたに必要なのは双眼鏡ではなくギターだ。ギターを手に入れて「スモーク・オン・ザ・ウォーター」でも練習してくれ。
「そいつは見逃せねえ」という同士に一言、言いたい。
今すぐ双眼鏡を手に入れてくれ。それもできるだけいいやつを。
我々が双眼鏡を手に入れなければならない理由があるとしたら、それは「大ちゃんの涙を見逃すわけにはいかない」あるいは「HIROのはだけたシャツの向こう側を見逃すわけにはいかない」のどっちかだ。
双眼鏡ってやつの正体
昔、8千円ていどの双眼鏡を持っていた。
オリンパスのなんとかという双眼鏡だ。10倍だか12倍だったように記憶している。私はこれをビッグカメラの福引で引き当てた。そして最後は東京ドームで盗まれた。
そこそこのモノだったし、いちおうは見えた。でも妙に暗かった。それにめちゃくちゃ揺れて気持ちわるい。これならわざわざ双眼鏡なんてのぞかなくても、クソでかいスクリーンを見てた方がいい。そのうち双眼鏡は「持っていくけど使わない重いモノ」に成り下がった。
この経験から、「双眼鏡なんてものはどれも同じで、そのうち使わなくなる」と考えるようになった。
だから双眼鏡を探しはじめたときも、適当に「3000円くらいのでいいや」とか思っていた。
しかし調べを進めていくうち、どうやら3000円じゃクリアに見えないらしいとわかってきた。
私は目の穴をかっぽじって調べまくった。その結果、双眼鏡は「金を積むほど圧倒的にクリアに見える」とわかった。
どんなモノだって、金を積み上げるほどにレベルが上がる。
外装がカーボンになり、エンジンがターボになり、レースクイーンの人数が増える。何でも金である。
そして双眼鏡をいちど買ったら、むこう5年や10年は使いつづける。
だったらもう、いいのを買っちまおう、ということになった。
Vixen アトレックII HR8×32WP
さんざん検討しまくって、「Vixen アトレックII HR8×32WP」を購入した。
Amazonでの価格は17,973円 (2020年12月16日現在)。
私の買ったときより、えらい値下がっている。複雑だ。
高額ではあるが、この価格であれば「買い」だと思う (だってつい2ヶ月前に2万で買ったもん)。
この「アトレックII HR8×32WP」をはじめてのぞいた時、そのクリアな視界にぶっとんだ。
肉眼じゃぜったい見えないような、遠くのものがくっきり見える。直線距離で387m離れた学校の、職員室に人がいるのまで見える。こんなの肉眼じゃぜったい見えない。見えすぎて怖いくらいだ。職員室をちょっと見てるだけなのに、ものすごくわるいことをしてる気分になる。
月のクレーターまで見える。こいつはドームで盗まれたオリンパスの双眼鏡とは世界が違う、ぜんぜん違う。
今まで何もつけずに素潜りしてたやつが、生まれてはじめてゴーグルをつけたときに感じるおどろきに近い。
まさに別世界だ。
メーカーを決めておいたほうがいい理由
メーカーは「ビクセン」と決めていた。
オリンパス、キャノンも双眼鏡をつくっているけど、これらのメーカーはカメラなんかもつくっている。
「望遠鏡、双眼鏡ひとすじ」なビクセンの武士道に惹かれたのである。
くわえて我らが大さまも「ビクセン」を使用しておられるとの情報もいただいた。
つまり「ビクセン」以外に選択肢はそもそもないといえる。
それに実際問題としてメーカーを絞って検討しないと、星の数ほど存在する双眼鏡を選ぶなんて無理である。
「同じ価格なら、キャノンの方がスペックが良い」なんて検討はしない方が賢明だ。間違いなく泥沼化する。
8倍がおすすめな理由
8倍か10倍で迷ったけれど、結果的に8倍を購入してよかった。
「えっ、10倍の方がいいじゃないの?」
私もそう思っていた。だけど10倍はおすすめできない。
なんでか。
ずっと見てると、気分がわるくなるのだ。
想像してたよりも視界が揺れる。20秒も見てると、車酔いみたいな感覚になる。そしてようやく理解する。5万もする「防振双眼鏡」がなぜ売れるのかを。
8倍でこれだけ揺れるなら、10倍だったらもっと揺れている。
双眼鏡をのぞきながら「おええええ」と吐くのは避けたい。
ドームクラスは10倍以上でないと厳しいだろうが、ホールであれば8倍でじゅうぶん見える。
390gは重くない
Amazonのレビューでは「重い」という指摘もあった。
しかしライブ中、一度も重いとは感じなかった。というか前を見るのに必死で、重いも軽いもない。
天体望遠鏡ならまだしも、双眼鏡は手持ちを念頭に開発されている。それゆえ重さは常識の範囲内だ。
重さの点については、まったく心配いらない。
想像の100倍見えるぜ
かんじんの見え方については、それはもう、見えまくりもいいとこだった。
想像の100倍くらい見える。服に隠された部分は見えないけど、それ以外ならどうしようもなく見える。
くっきりはっきり、裸眼より見えるんじゃないかってくらい、とんでもなくクリアに見えた。
そして暗転したステージも見えた。それほどレンズが明るいのだ。これにはさすがにおどろいた。
どのくらい見えるかをブログで説明したい、ライブ中に私は考えた。この「見えさ」を伝えたい。
私はHIROの耳に埋められたイヤモニに注目した。もうちょっとでブランドが見えそうだった。
くっ、見えない。HIRO、ちょっと横向いて。1コーラスくらいねばったが無理だった。
つまり「イヤモニのブランドが見えそうで見えないレベル」で見える。参考にしていただきたい。
(ところで私はイヤモニのブランドなんかいっこも知らない)
* * *
「Vixen アトレックII HR8×32WP」は100点中1000点の双眼鏡だった。自信を持っておすすめしたい。
もしもこの先ぶっ壊しても、きっとまた同じのを買うだろう。もうこの双眼鏡なしには考えられない。
とはいえ2万弱である。躊躇して当然だ。
それでも私は全力でおすすめしたい。なぜなら双眼鏡は買えても、チケット運は買えないからだ。
席の場所を選ぶことはできない。双眼鏡を使い、自力で「かさ増し」するしか手がない。名づけて「かさ増し神席作戦」である。
ライブには双眼鏡を連れてってほしい。しかもできるだけいいやつを。
そしてみんなで大ちゃんの美しき涙と、HIROのシャツの向こう側を見よう。