君は世界に一人だけ

君は世界に一人だけ

感じたことと考えたこと

出戻り3ヶ月で起こった5つの変化

誰もいないエントランスを抜けて、ドアを開ける。

会社から一歩、外へ出た瞬間にリュックの中からワイヤレスイヤホンを引きずり出す。

駅へ向かいながらそそくさとアプリを立ち上げ、プレイリストを再生する。

いつもの音、いつもの歌声。
からだがほんの少し軽くなって、私が私に戻っていく。

音楽は、私を卵の中にかえしてくれる。そこは薄くて固い殻で守られていて、私は安心して私でいられる。

見えない殻に守られながら、私は薄闇の街を足早に歩いていく。

* * *

accessに出戻って3ヶ月が経った。

この3ヶ月のあいだに起こった変化は大きい。なんと身長が15センチ伸びました、みたいなダイナミックさには欠けるけど、そこそこ大きな変化だ。

何かを好きになれば、多少の変化は起こる。でも生活が一変してしまうほどの変化はそうそう起こらない。
忘れちゃわないうちに、どんな変化が起こったのかを書いておきたい。

1. 聴く音楽が変わった

まずaccessを毎日聴くようになった。

accessを聴くのは活動休止以来のため、まるまる25年ぶりだ。
中学生時代にワープしたみたいに、accessばっか聴いている。

この5年あまりは、おもにジャズやクラシックを聴いていた。
ジャズやクラシックなんて、ひとっつも知らない。たんに「ジャズやクラシックを聴く大人」になりたかっただけである。

ジャズやクラシックを聴く大人を装いながら、年老いて死んでいくのだと思っていた。まじで。

それが突然、accessのライブDVDを毎日見るフェーズに突入したものだから夫もびっくりである。

そしてaccessをきっかけに、昔よく聴いたバンドのアルバムなんかも折に触れてチェックするようになった。

昔好きだった音楽の威力はすごい。心の温まりかたがちがう。

いろいろあったけど、でも、がんばってたじゃん俺。なんて、過去の自分に対して少しだけ優しい心持ちになれる。
音楽を聴いて楽しいとか、救われるなんて、思い出せないくらい久しぶりの感覚だ。

サンキューフォーザミュージック。accessは、音楽を楽しむ気持ちを思い出させてくれた。

2. 半アル中が治った

夜な夜なワインを飲むのをやめられなかった。

常日頃、ものすごいストレスを抱えているわけじゃない。
仕事でむしゃくしゃすることがあった、というのでもない。
ただ、ずっともやもやしていた。

小さな不安の種が、いろいろある。
今でもそうだし、誰だってそうだ。
ひとつひとつは大したことのない心配や不安でも、それらが塊となって腹の中におさまっているとけっこうしんどい。

アルコールは、そんな塊を一時的に忘れるために必要なものだった。

残念ながら持病があり、そもそも飲酒はよろしくないとされている。
飲むとたいてい体調が悪化する。そう分かっていてやめられなかったのだから、半分アル中である。

そんな半アル中がaccessに出戻って以降、飲酒量がいきなり減った。

毎日飲んでいたのが少しずつ減り、今では飲む日の方がめずらしいほどになった。
以前は月に1、2回は1ケースのワインを注文していたのに、もう3ヶ月以上も注文していない。

つまり酒で紛らわす必要がなくなったんである。
accessによって私の心は、かなり満たされちゃっているというわけだ。

accessを聴いてさえいれば毎日ハッピーなんて、人生はそれほどイージーじゃない。
でも酒で紛らわさなくても、ふつうに落ち着いた精神でいられるようになった。

それってけっこう幸せじゃないかと、元半アル中の私なんかは思うのだ。

3. 買い物依存症が治った

世の中には多種多様な沼がある。
北欧インテリア。これもまた一種の、果てなき沼である。

北欧インテリアがきらいだというひとは、あまりいないんじゃないかと思う。
北欧沼には、十数年どっぷりとはまりこんでいた。

これまで北欧食器やらインテリアに膨大なお金を投じてきた。とりわけ、魔力的な魅力をもつオンラインショップ「スコープ」のとりこだった。

皿はもちろんのこと、家具や照明、アートピースにいたるまで、毎月、必ず何かを購入していた。買わずになんていられなかった。

そのうちビンテージにも手を出しはじめ、血走った目でeBayのページをスクロールするようになった。
eBayで見つからなければ、世界中のオンラインショップを探し回った。睡眠時間を削れるだけ削り、血眼になって探し求めた。狂気以外のなにものでもない。

本当は自分でも、うすうす気づいていた。
手にいれたモノで、何を埋めていたかを。分かっていてクリックする手を止められなかった。早い話が買い物依存症だった。

それがaccessに再会したからというもの、ぱたっと買わなくなった。

スコープでの買い物をやめ、eBayにログインしなくなり、世界中のオンラインショップを這いずり回るのをやめた。

たった一夜で、ころっと変わっちゃったんである。

これまで北欧に投入してきたお金と時間について考えだすと、わりとまじに泣けてくる。
この沼から救い出してくれたaccessには感謝しかない (そっちはそっちで沼という説もあるけど)。

4. 夫婦仲がアップした

私には年上の夫がいる。

これまで彼と、音楽についてまったく語ってこなかったわけではない。

しかし日々の雑務やら、たまった洗濯ものやら、俺のパンツを勝手に履くなという会話が優先された結果、なかなか音楽について語るという段階に到達しなかった。

accessに出戻って以降、彼と音楽について語る機会が増えた。
accessの曲が、それぞれの過去を呼び起こす呼び水になったのだ。

ルーツは似た者どうし、だけど音楽に対する考え方や、心の掴まれるポイントがちがう。
20年くらい一緒にいるのに、まだ知らない一面があるのは新鮮だし、おもしろい。

お互いが好きだったバンドなんかについてああだこうだと熱く語るのは、他のどんな会話よりも楽しい。

そして日常生活にaccessを持ち込むだけでなく、段ボールでKX5をつくっちゃう彼は、たぶん私のことが好きなんだと思う。
私も彼が好きだ。HIROとどっちが好きかって聞かれたら、コンマ2秒でHIROだと答える。

夫婦仲がアップしたのも、accessのおかげである。

5. ブログをはじめた

ブログがいちばんダイナミックな変化だ。

それまでは「誰かに何かを伝えたい」的意欲をまったく持っていなかった。
北欧沼にずっぽしつかっていながら、インスタさえやんなかった。ブログなんてもってのほかだ。
世の中に対して言いたいことも伝えたいことも、何ひとつ持ってなかった。

そんなだったのに、accessをきいてるうち、ある日突然「おら書きてえ」という波がどかんと一発きた。
Write Waveである。

そして自分が、書くのがめちゃくちゃ好きだったと知った。

文章力とか語彙力とか、そういうのはわりとどうでもいいというか、気にならない。だって練習してもいないのに、いきなりギターソロなんか弾けない。書くのだって一緒だ。

「書きてえ」っていう気持ちを持てているのが、今は純粋に嬉しい。こつこつ書いていけば、いつかはギターソロだって弾けるし、空も飛べる。
純粋な感情を何より大切にしなくちゃいけない。

accessを聴いてなかったら「書きてえ」なんてぜったい思わなかったし、実際はじめるまでに至らなかった。
けっこうな衝動である。バージンエモーションといってさしつかえない。

好きなことを見つけるきっかけをくれたのはaccessだ。再会できて本当に良かった。

* * *

もうひとつ大きな変化がある。
Twitterでの交流だ。

話しかけたり話しかけられるのがこんなに楽しいなんて!って、日々感動している。

何か、学校の放課後を思い出す。内容なんかあるようでなくて、いつまでもぺちゃくちゃおしゃべりしてるみたいな。

放課後のない私には、あるいは私たちには、そういう心の交流が多少なりとも必要なのだ。たぶん。きっと。

これからも笑い合いながら、お互いをあたたかく励まし合うような、そんな交流ができたらいいなと思っています。

* * *

accessに出戻ったおかげで、毎日がちょっと楽しくなった。
出戻り前とはぜんぜんちがう心持ちで、今日を生きている。
人生半分終わったなんて思ってたけど、今はまだ、もうちょっと楽しんでやるぜって気分だ。

今日は彼らのデビュー28周年だ。
25年経ったいま、再びaccessにアクセスできるのが最高にうれしい。

来年も再来年も、その先もずっと、こう言い続けたい。
大ちゃん、HIRO、ありがとう。




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